2019年11月11日 / お役立ち情報 介護保険制度とは?
皆様ご存じの通り、日本は世界でも有数の長寿国です。
長寿国である日本では、2007年にすでに超高齢化社会へと突入し、今後も高齢者率が高くなっていくことが予想されております。
それに伴い介護を必要とされる方が増え、介護への需要が高まっています。
もちろん、健康で元気に過ごすことが理想ですが、もし介護が必要な状態になってしまったら・・・今回はそんな時に手助けしてくれる【介護保険制度】についてお伝えしていきたいと思います。
1. 介護保険制度とは?
介護は必要になった高齢者を社会全体で支えるしくみが介護保険制度です。
介護保険で受けられるサービスや、加入者の条件、申請方法など、1つずつ触れていきます。
1-1. 介護保険制度とはどんな保険?
介護保険は介護が必要な方に、その費用を給付してくれる保険です。
保険ですから、皆で保険料を負担して、必要な方に給付する仕組みになっています。どんな保険でもそうですが、給付を受けるには色々手続きをしなければなりませんし、受けられるかどうかの審査もあります。(介護度認定)
制度の運営主体(保険者)は、全国の市町村と東京23区(以下市区町村)で、保険料と税金で運営されています。
サービスを受けるには原則1割の自己負担が必要です。ただし、前年度の所得に応じて、自己負担率が2割あるいは3割になります。
1-2. 保険料の支払いは何歳から?
介護保険制度は40歳になると加入が義務付けられ、保険料を支払うことになります。
40歳から64歳までの被保険者は加入している健康保険と一緒に徴収されます。個別の保険料の決め方には各健康保険組合によって違いがあります。
協会けんぽや職場の健保、共済組合の医療保険に加入している方は、給与に介護保険料率を掛けて算出され、事業主がその半分を負担します。
介護保険料率は健康保険組合によって異なります。さらに医療保険と同じように被扶養配偶者は収める必要がありません。
国民健康保険に加入している方の場合は、所得割と均等割、平等割、資産割の4つを自治体の財政により独自に組み合わせて計算され、介護保険料率も異なります。
所得割は世帯ごとに被保険者の前年の所得に応じて算出されます。
65歳以上の被保険者は、原則として年金からの天引きで市区町村が徴収します。
しかし、介護設備の整備状況や要介護者の人数など、自治体によってさまざまなので、自治体ごとに金額が違います。
負担が大きくなりすぎないように、また、低所得者の保険料軽減のために国の調整交付金が使われています。
1-3. サービスを受けられる被保険者は?
介護保険の加入者には第1号被保険者(65歳以上の方)と第2号被保険者(40歳から64歳までの方)の分類があります。
保険料の支払い義務はどちらにもありますが、サービスの対象者 (受給者) は、原則として第1号被保険者だけです。
第2号被保険者は老化に起因する疾病(指定の16疾病)により介護認定を受けた場合に限りサービスの対象となります。
指定の16疾病は以下の通りです。
1-4. 介護保険被保険者証はどこでもらえる?
制度の運営主体(保険者)は市区町村です。そのため、お住まいの自治体の介護保険課、高齢者支援課など(自治体により窓口の名前が違います)が窓口となります。
65歳以上の方には一人ひとりに被保険者証が郵送で交付されます。
40歳から64歳までの方には、通常発行されませんが、特定疾病に該当する場合には、介護認定されたのち、発行されます。
介護保険被保険者証は、65歳の誕生月に市区町村より交付されますが、そのままでは介護保険サービスは利用できません。介護保険サービスを利用する場合には、介護認定を受けるための手続きをすることを忘れないようにしましょう。
2. 介護保険で受けられるサービスについて
要介護認定されると、介護保険を利用してサービス受けることが出来ます。
では一体どんなサービスを受けることができるのでしょうか?
2-1. 介護保険で受けられるサービスとは?
受けられるサービスは以下の通りです。
(1)居宅介護支援
ケアプランの作成(その人にどのような介護サービスを提供していくか)、家族の相談対応など
(2)自宅に住む人のためのサービス(居宅サービス)
<訪問型サービス>
訪問介護
生活援助(掃除や洗濯、買い物や調理など)
身体介護(入浴や排せつのお世話)
訪問看護(医師の指示のもと、看護師が健康チェックや、療養上の世話など)
訪問入浴介護(自宅に浴槽を持ち込み入浴介助を受ける)
訪問リハビリテーション(リハビリの専門家に訪問してもらい、自宅でリハビリを受ける)
居宅療養管理指導(医師、歯科医師、薬剤師、栄養士などに訪問してもらい、療養上の管理・指導を受ける)
定期巡回・随時対応型訪問介護看護(24時間対応型の訪問介護・訪問看護サービス)
<通所型サービス>
デイサービス(介護保険法での名称は「通所介護」となっている介護保険サービスで、ご利用者が送迎車による送迎などで事業所に通うことで、食事や入浴などの日常生活上の介護や機能訓練などのサービスを受けることができる)
デイケア(施設や病院などで、日常生活の自立のために理学療法士、作業療法士などがリハビリを行う)
認知症対応型通所介護(認知症と診断された高齢者が利用するデイサービス)
<短期滞在型サービス>
ショートステイ(施設などに短期間宿泊して、食事や入浴などの支援や、心身の機能を維持・向上するためのリハビリの支援など。家族の介護負担軽減や施設入居準備などに利用できる)
(3)施設に入居するサービス(施設サービス)
特別養護老人ホーム(特養)
介護老人保健施設(老健)
介護療養型医療施設(療養病床 ※「介護医療院」に順次転換予定。)
(4)福祉用具に関するサービス
介護ベッド、車イスなどのレンタル
入浴・排せつ関係の福祉用具の購入費の助成(年間10万円が上限で、その1~3割を自己負担することで購入できる)
(5)住宅改修
手すり、バリアフリー、和式トイレを洋式にといった工事費用に補助金が支給される。最大20万円までで、利用者負担はその1割~3割程度。
また、有料老人ホームで、自治体から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けているところは、介護サービスに介護保険が適用されます。月額の費用もサービス内容もさまざまですので、よく調べてから利用するようにしてください
→介護付有料老人ホームとは?
介護付き有料老人ホームとは、都道府県の指定(認可)を受けた有料老人ホームで、介護保険制度上では「特定施設(特定施設入居者生活介護)」というサービスに分類されます。
24時間介護スタッフが常駐し、掃除や洗濯など身の回りの世話や、食事や入浴、排せつなどの介助サービスが受けられ、主に民間企業が運営しています。
→地域密着型サービスとは?
地域密着型サービスは、介護が必要になっても住み慣れた地域で生活が継続できるように、地域ぐるみで支援するしくみです。
独居高齢者や認知症高齢者の増加などが背景にあります。サービスを行う事業所は市区町村が指定し、原則としてその地域に住民票のある人しか利用できません。
また、施設の立地も地域住民と交流の持てるような場所と定められています。
「小規模多機能型居宅介護」や「グループホーム(認知症対応型共同生活介護)」などがこれに該当します。
※利用にあたっては要介護者本人と一緒に見学に行くことをオススメします。他の利用者やスタッフの雰囲気などをチェックするほか、できることなら体験利用をして自分に合ったサービスを提供してくれるかなどを確認した方が良いでしょう。
2-2. サービスを受けるための申請方法
介護保険のサービスを利用するには、まずお住まいの市区町村の介護保険担当窓口に行って、申し込むことから始めます。
そして、介護保険サービスの必要性を判断します。
役所の窓口で日程調整をし、役所から依頼された担当者が自宅に来てご本人に日常生活の状況を伺い、身体機能のチェックを行います。その後、認定が出るまでに1か月程度を要します。
介護認定が出たら、要支援が出た場合は、地域包括支援センターに相談、要介護が出た場合は、ケアマネジャーに相談します。
要介護の方は、自治体で、地域で活動しているケアマネジャーのリストをもらえますので、その中から、自宅との距離などを考えて、何人か電話をしてみましょう。良さそうな人がいたら、自宅に来てもらい困っている点などを相談します。
初めは分からないことも多いと思いますので、一度ケアマネジャーとお会いして、まずは困っていることやわからないことなどを相談してみましょう。
雰囲気や利用者との相性などをみて、別のケアマネジャーに変更することもできます。話しやすく親身になってくれる相性の良いケアマネジャーを探しましょう。
ケアマネジャーは介護の計画書である「ケアプラン」を本人や家族の希望を聞きながら作成します。さらに、本人だけではなく、介護されているご家族の相談も聞いてくれます。
今後、日ごろの介護の大変さを相談することもありますから、話しやすい方を探しておくと先々心の負担が軽くなるかもしれません。
ケアプランが決まると、それに基づいてサービスが受けられます。
要支援の方は、お住まいの住所を担当している地域包括支援センターへ相談することで、上記の流れに沿って、相談を受け付けてくれますので、相談してみましょう。
どこの地域包括支援センターに連絡すればよいか、わからない場合には、市区町村役場の介護保険担当窓口へ聞いてみましょう。
2-3. 予防給付とは?
今までは、介護度1~5の認定を受けたことを前提としてお話をしてまいりましたが、介護認定で要介護1~5よりも介護度が軽い場合、要支援1または2という認定になる事があります。
要支援1や2の方は、少し支援すれば自立して生活できる人という判定なので、身体機能の低下を予防して要介護にならないために、予防給付というサービスが受けられます。
予防給付でも訪問介護や、デイサービス、一部の福祉用具のレンタルや住宅改修などが利用できます。
自己負担も1割~3割で同じです。ただし、支給限度額が要支援の場合は要介護の場合より低く設定されています。
3. 介護保険のお金について
介護保険は必要な人が使えるように、保険料と税金で運営されていること、所得により、1割から3割の自己負担があることは先にお伝えしておりましたが、ここではもう少し詳しくお伝えしていきたいと思います。
3-1. 自己負担の割合は?
介護保険施行当初は全員1割負担でしたが、現在は所得に応じて1割~3割負担となっています。
また、平成29年6月2日に公布された「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」の「四 介護給付及び予防給付について、一定以上の所得を有する第一号被保険者に係る利用者負担の割合を、その費用の100分の30とする。」は平成30年8月1日から施行されております。
そのため、現役並に所得のある高齢者は、介護保険利用時の自己負担割合が3割となっています。
詳しくは、以下の通りです。
▼3割負担の人
・合計所得金額が220万円以上であり、
年金収入+その他合計所得金額=340万円以上(単身世帯)
年金収入+その他合計所得金額=463万円以上(夫婦世帯)
・単身で年金収入のみの場合は344万円以上に相当
▼2割負担の人
・合計所得金額が160万円以上であり、
年金収入+その他合計所得金額=280万円以上(単身世帯)
年金収入+その他合計所得金額=346万円以上(夫婦世帯)
・単身で年金収入のみの場合は280万円以上に相当
▼1割負担の人
上記に当てはまらない人
3-2. 一カ月に利用できる上限金額
介護保険の在宅サービスなどを利用する場合は、要介護状態区分別に、介護保険から給付される上限額(区分支給限度額)が決められています。利用者負担は、原則としてサービスにかかった費用の1割または2割で利用できますが、超えた金額については全額自己負担となります。
令和元年10月からの消費税率引き上げに伴う介護報酬の改定により、区分支給限度額も下表のとおり引き上げられています。
!注記!
・実際の支給限度額は金額ではなく「単位」で決められており、サービスの種類によって1単位あたりの単価が異なります。
・上の表の区分支給限度額は利用できる金額の目安として、1単位あたり10円で計算しています。1点の単価は、賃金の地域差により決まっています。
以上のことを踏まえ、上記表はあくまで目安とお考え下さい。
4. まとめ~今後の介護保険について~
2000年に施行された介護保険制度ですが、見直しをしながら実情に合ったものにしていこうという意図で、3年ごとに見直されることになっています。
少子高齢化が予想以上のスピードで進行し、改正がそれを追いかけているような格好になっています。
また、介護を必要とする人は年々増加しており、それに伴う人材確保の問題や、改正の後、自己負担額の割合の増加、介護保険料の増加などがこれまでの動きから考えられます。
今回は介護保険制度についてお伝えいたしましたが、病気やケガなどに比べてなかなか普段は意識して考えることが少ないのではないかな?と思います。
介護保険は、さまざまなルールや手続き、審査や更新など、初めて利用する方はハードルが高いと思われることもあると思いますが、利用してみると、本人や家族にとって、とても助けになる制度です。
いざ、自分や周りの人が介護状態になってしまった時にも、慌てることのないよう、備えは充分か?どのように備えたら良いか?
一度考えてみるのも良いかもしれません。