2018年11月5日 / お役立ち情報 損害保険「補償の重複」にご注意を!生命保険以上の無駄になります
保険の見直しでは死亡保険・医療保険などの生命保険に関しては問題になりやすく、話題としても多いのですが、生命保険は複数社かけていたら保険金がおりないということは基本的にありません。
対して損害保険は実損を補償するのが基本ですので、複数社かけて実損以上に保険金がおりてしまったら目的を逸脱することになります。気がつかないうちに保険の補償が重複していることも多々あります。補償(特約)が重複した状態で事故が発生した場合には、どちらかの保険契約においても補償対象ではありますが、いずれか一方の保険からは保険金または共済金の一部または全部が支払われない場合があります。
1.「補償の重複」っていったいどういうこと?
損害保険には、自動車保険、火災保険、傷害保険、医療保険などの商品があり、それらにはさまざまな補償(特約)をセットすることができます。そのため複数の保険に加入することで、同じ損害に対して同一または類似の補償(特約)が重なって存在している状態が発生してしまうことがあります。
たとえば、夫婦と子供が一人いる家庭の場合で、夫は「自分を含めた家族全員がケガをしたときに、実際かかった医療費について無制限で補償を受けられる」『保険A』に入ったとします。一方で、妻は、「自分がケガをした時に、実際にかかった医療費に対して最大100万円の補償が受けられる」『保険B』に加入したとしましょう。すると、妻がケガをしたときの補償が、『保険A』と『保険B』の両方に存在することになります。これが補償の重複です。
補償の重複には「完全重複」と「不完全重複」があります。
補償の重複が問題になるのは、保険料負担の無駄が発生したり、自分が望んだ以上の補償内容の契約になってしまったりする場合があるからです。上の例は保険料負担の無駄が発生している典型的な例です。妻がケガをしたときの損害は、『保険A』にて無制限に補償しているので、『保険B』に加入する必要はありません。『保険B』に加入するための保険料が無駄になっているのです。
このように、補償の重複が起きた結果、補償にまったくつながらない保険料負担が発生している場合を「完全重複」といいます。
一方で、補償の重複は発生しているものの、支払っている保険料が一概には無駄とはいえないケースもあります。上に挙げた例で、夫の入っている『保険A』の保険金額(保険金の支払限度額)が200万円だった場合を考えてみましょう。『保険A』『保険B』が、実際にかかった医療費の範囲内であれば、複数の保険から保険金を受け取れるタイプなら、妻がケガした場合に最大300万円の補償を受けることができます。つまり、補償範囲は重なっているものの、支払っている保険料自体は補償につながっており、無駄にはなっていないということです。このような場合を「不完全重複」といいます。
完全重複、または不完全重複で自分が除く補償以上になっている場合は、『保険A』の補償範囲の見直し、もしくは『保険B』の解約などを検討した方がよいでしょう。
2.補償が重複しやすい特約等
さて、どのような特約等で補償が重複しやすくなるのでしょうか?補償が重複しやすい特約をご紹介いたします。
2-1.個人賠償責任補償特約
個人賠償責任補償特約は補償対象者の範囲が記名被保険者、記名被保険者の配偶者、記名被保険者または配偶者の同居の親族、記名被保険者または配偶者の別居の未婚の子と広く、補償限度額が無制限という場合もありますので、補償が重複しやすい傾向があります。
この特約は、自動車保険だけではなく、火災保険や傷害保険にもセット可能ですので、特に注意が必要です。
2-2.自動車保険 /人身傷害保険
何気なく加入されている自動車保険の人身傷害保険ですが、保険会社によって補償内容が異なったり、特約の付帯(セット)有無で補償内容が異なることをご存じでしょうか?人身傷害保険は、加入の方法によっては、自転車事故等も補償される場合があります。
人身傷害については、補償額や補償内容についてあまり気にされていない方も多いのではないでしょうか。人身傷害保険はご自身やご家族を守る大切な補償なので、もう少し注目していただければと思います。
【人身傷害保険の補償対象者の範囲】
・記名被保険者
・記名被保険者の配偶者
・記名被保険者または配偶者の同居の親族
・記名被保険者または配偶者の別居の未婚の子
2-3.自動車保険/ファミリーバイク特約
ファミリーバイク特約も補償の範囲が人身傷害保険同様広いので、複数の車を同居の家族で所有している場合、補償が重複する可能性があります。
家族で所有する複数の車にファミリーバイク特約(自損型)がそれぞれ付帯されている場合、対人賠償、対物賠償が無制限であれば、完全に補償が重複します。また、「人身傷害型」の場合も1台が人身傷害保険の補償額が無制限であれば、完全に補償が重複し、1台分の特約保険料が無駄になります。
2-4.自動車保険/弁護士費用特約
弁護士費用特約も同居の家族等で複数台の車を所有する場合、補償が重複することがあります。複数の車のうち、1台に弁護士費用特約が付帯されていれば、下記の方が他の車を運転する場合にも補償の対象となります。
【弁護士費用特約の補償対象者の範囲】
・記名被保険者
・記名被保険者の配偶者
・記名被保険者または配偶者の同居の親族
・記名被保険者または配偶者の別居の未婚の子
但し、弁護士費用特約は保険金額が無制限ではなく、300万円程度ですので、複数の車に同特約が付帯されている場合、それぞれの契約の保険金額を合算した額が支払われる保険金の上限となります。「不完全重複」の状態です。また、上記の補償範囲以外の方が弁護士費用特約の付帯されていない車を運転する場合は、補償対象となりませんので、注意が必要です。
3.解約時に注意が必要
補償の重複を避けるために補償内容を見直した後、複数の契約のうちの一部の契約を解約することになった場合、必要な他の補償がなくなってしまう可能性もありますので、契約を解約する際には、他の契約内容を確認し、補償内容が不足することがないか確認するようにしましょう。